最首塾のおしらせ

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『「痞」という病いからの 水俣誌々パート2』書評のお知らせ

『情況』(第三期)2010年6月号に書評が掲載されました!
執筆者は『水俣50年 ひろがる「水俣」の思い』(作品社、2007)でシンポジウムの司会を務めてくださった神貴夫さんです。
ご自身の生活(人生)を交えながらの大変な論評です。
 
【以下一部抜粋】
 
「本書の著者である最首氏は日本の科学のいわば最高権威の場所でもある「東京大学」で、「科学者」の端くれとしてスタートした。全共闘時代をくぐる中で水俣病と出会い、当初は認定基準の非合理に対して、行政や医学の姿勢を科学的な見地から批判する立場を取っていたと思われる。しかし、思考とのかかわりやしょうがいをもって生まれた娘星子との暮らしを通して、科学そのものが本質的にかかえている「現象を切断し、類型化する」行為と、水俣病認定基準のあり方に共通の思想的背景を見出すことになる。

 この世の起源を法則的に解き明かすことを目指した科学が行き着いた果ては、物質やそれらの振る舞いが「不確定」で「量子的」であることを認めざるを得なくなっている。にもかかわらず、旧来の「科学」の時々の権力や保身の手先として科学的権威を振りかざす姿勢に対し、厳しい批判を向けていくことになる。その矛先は自らの思想・哲学にも向けられていく。本書は、水俣病を通して「命と物質」「生と死」を連続的に捉える世界観の提起に至る著者自身の思想形成の過程が描かれていると言ってよい。

 環境問題の解決に向けて様々な技術的な検討がなされている。しかし、本書を通読すれば、それらはことの表層にしかすぎないこととがわかる。水俣病が人類に突きつけた真の問いとは何か。その底知れぬ奥深さの先にこの世にゆだねられた命の存在の安らぎに気づかされていく。」
 
【以上抜粋終わり】
 
来月くらいに最首塾のホームページにこれまでいただいた書評をまとめてお知らせするようにしたいと思います。